

腰痛は、痛みが始まってからどのくらいの期間が経っているかによって、「急性腰痛」「慢性腰痛」などに分けて考えることがあります。この区分は単なる呼び方の違いではありません。発症して間もない腰痛と、長く続いている腰痛では、経過の見方や評価の考え方が異なるためです。

一般的に、発症から4週間未満の腰痛を「急性腰痛」、4週間から12週間程度を「亜急性腰痛」、12週間、つまり約3カ月以上続く腰痛を「慢性腰痛」と呼びます。[1]ただし、11週間と12週間で急に病態が変わるわけではなく、あくまで経過を整理するための目安です。
急性腰痛の代表的なものには、いわゆる「ぎっくり腰」があります。重い物を持ったとき、身体をひねったとき、朝起きたときなどに突然強い痛みが出ることがあります。
急に痛みが出ると、「腰に大きな異常が起きたのではないか」と不安になる人も少なくありません。しかし、急性腰痛の多くは時間の経過とともに軽くなっていきます。[3]発症直後の痛みが強いからといって、必ずしも腰の損傷が大きい、あるいは将来慢性腰痛になるという意味ではありません。
急性期では、「いつ、どのように痛みが始まったか」「どのように変化しているか」を確認することが大切です。
一方、腰痛が約3カ月以上続いている状態を慢性腰痛と呼びます。ここでよく誤解されるのが、「慢性=重症」「慢性=治らない」という考え方です。
慢性という言葉は、基本的には痛みが続いている期間を表しています。3カ月以上痛みが続いているからといって、腰の状態が3カ月間ずっと悪化し続けているとは限りません。また、慢性腰痛になったから、その後改善しないという意味でもありません。[3]
急性期に起きた腰痛が長引いている場合でも、最初に痛めた部分がそのまま治っていないとは限りません。だからこそ、痛みが長期間続いている場合には、急性期と同じ見方を続けるのではなく、一度状態を整理し直すことが重要になります。
約3カ月という期間は、腰痛だけでなく、痛みを急性と慢性に分ける際の一つの基準として使われています。[2]
身体の組織は、負担や損傷が起きたあと、時間をかけて回復していきます。多くの急性腰痛も、数日から数週間の経過で症状が軽くなっていきます。[3]その一方で、十分な時間が経っても痛みが続いている場合には、「最初に傷めた場所がまだ治っていない」と考えるだけでは不十分なことがあります。
そのため、3カ月程度を一つの節目として、それまでの経過や現在の症状を改めて確認し、腰痛をどう捉えるかを見直していきます。

腰痛が長引いているときには、痛みの強さだけでなく、「いつから続いているのか」を整理することが大切です。
例えば、「3日前から急に痛い」という人と、「半年間ずっと痛い」という人では、同じ腰痛でも状況は大きく異なります。また、「数年前から時々痛かったが、1か月前から強くなった」というように、長い経過の中で痛み方が変化しているケースもあります。
医療機関で相談するときには、最初に痛くなった時期、痛みが強くなった時期、途中で症状が軽くなった期間があったか、以前にも同じような腰痛を経験しているか、といった情報を整理しておくと、状態を伝えやすくなります。
腰痛が3カ月を超えたからといって、「もう治らない」と考える必要はありません。3カ月という期間は、腰痛の見方を切り替える一つの目安です。
急性腰痛では、まず発症からの経過を見ながら回復を考えます。一方、慢性腰痛では、「なぜ痛みが続いているのか」を改めて整理することが重要になります。
つまり、急性腰痛と慢性腰痛の違いを理解するポイントは、単純に痛みの強さを比べることではありません。「どのくらいの期間続いているのか」「これまでどのような経過をたどってきたのか」を確認し、その時期に合った考え方へ切り替えていくことが大切です。
腰痛が3カ月以上続いている場合、それは「治らない」というサインではなく、一度これまでの経過を見直し、現在の状態を整理するタイミングと考えるとよいでしょう。
参考文献
[1] 日本整形外科学会, 日本腰痛学会 監修. 腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版). 南江堂; 2019.
[2] Treede RD, Rief W, Barke A, et al. Chronic pain as a symptom or a disease: the IASP Classification of Chronic Pain for the International Classification of Diseases (ICD-11). Pain. 2019;160(1):19-27. doi:10.1097/j.pain.0000000000001384
[3] da C Menezes Costa L, Maher CG, Hancock MJ, et al. The prognosis of acute and persistent low-back pain: a meta-analysis. CMAJ. 2012;184(11):E613-E624. doi:10.1503/cmaj.111271
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